農林水産省は、「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成6年法律第113号)第42条第2項」に基づき売り渡す輸入小麦の「平成30年4月期の政府売渡価格」を決定しました。これによりますと、前回6か月前の輸入小麦の増加に引き続き、今回も増加となりそうです。
※参考:前回記事「2018年はいきなり小麦粉の値上げ!」
1.政府売渡価格の改定内容
輸入小麦の直近6か月間(平成29年9月第2週~平成30年3月第1週)の平均買付価格は、高タンパク質小麦の減少懸念や、収穫の遅れにより価格が上昇したこと、燃料油価格の上昇により海上運賃が上昇したこと、為替が円安傾向で推移したこと等から、前期に比べ上昇しました。
この結果、平成30年4月期(平成30年4月~)の輸入小麦の政府売渡価格は、政府売渡価格の改定ルールに基づき、直近6か月間の平均買付価格を基に算定すると、5銘柄加重平均(税込価格)で54,370円/トン、3.5%の引上げとなります。
(単位:円/トン)
政府売渡価格 | 29年4月期 | 29年10月期 | 30年4月期 | 対前期比 |
5銘柄加重平均(税込み) | 50,690 | 52,510 | 54,370 | +3.5% |
前回に続き、+3.5%の引き上げとなります。
下の公開資料のグラフの通り、今回の価格は3期連続で引き上げられています。
平成28年10月期の48,470円の底から見ると、12%UPの5,900円/トンとなります。
推移をみると、引き続き値上がりしそうです。
出典:輸入小麦の政府売渡価格について
(価格公表添付資料)平成30年3月 農林水産省
2.穀物の国際価格(シカゴ相場)の推移(参考)
前回
シカゴ商品取引所における小麦相場は、米国、豪州において生育期の降水量が少なく、減収懸念から上昇しています。7月末以降世界的に潤沢な在庫・供給量を背景に下落しているものの、29年10月期算定期間(平成29年3月2週~9月第1週)の平均価格は前期に比べ上昇しています。
今回
シカゴ商品取引所における小麦相場は、世界的に潤沢な在庫・供給量を背景に軟調に推移しており、30年4月期算定期間の平均価格は、前期(29年10月期)に比べてわずかに下落しました。
出典:輸入小麦の政府売渡価格について
3.小麦の日本向け輸出価格の推移
小麦の日本向け輸出価格は、①北米において、新穀のタンパク質が低い傾向となり、高タンパク質小麦が減少するとの懸念から価格が上昇したこと、②豪州において、ASWの主要構成銘柄であるヌードル小麦の価格が収穫の遅れにより上昇したことから、前期(29年10月期)に比べて上昇しました。
(価格公表添付資料)平成30年3月 農林水産省
4.海上運賃の動向
海上運賃は、燃料油価格の上昇を受けて上昇し、30年4月期の算定期間では平均46ドル/トン。
5.為替の動向
為替は、29年10月以降は円安傾向で推移したことから、30年4月期の算定期間では平均113円/ドル。
出典:輸入小麦の政府売渡価格について
(価格公表添付資料)平成30年3月 農林水産省
6.輸入小麦の政府売渡価格の推移
○輸入小麦の政府売渡価格は、小麦の国際価格、海上運賃、為替等の動向を反映した買付価格により変動。
○輸入小麦の直近6ヶ月間(平成29年9月第2週~平成30年3月第1週)の平均買付価格は、①高タンパク質小麦の減少懸念や、収穫の遅れにより価格が上昇、②燃料油価格の上昇により海上運賃が上昇、③為替が円安傾向で推移したこと等から、前期に比べ上昇。
○この結果、30年4月期の政府売渡価格は、54,370円/トン、+3.5%の引上げ。
出典:輸入小麦の政府売渡価格について
(価格公表添付資料)平成30年3月 農林水産省
(参考)物価・家計への影響
パンや麺等の小麦粉関連製品の小売価格に占める原料小麦代金の割合はそれほど大きくなく、今回の政府売渡価格の改定が消費生活に与える影響は限定的。
今回(30年4月期)の小麦の政府売渡価格の改定が消費者物価指数に与える影響
+0.003%程度
※小麦粉製品に占める小麦の価格のみに着目し、当該価格が全て今回の政府売渡価格の改定を反映していることを前提として試算。
小麦粉製品への影響額(試算)
(※1小売価格)(※2改定による影響額(試算))
食パン172円/1斤→+0.4円/1斤
うどん(外食)638円/1杯→+0.2円/1杯
小麦粉(家庭用薄力粉)245円/1kg→+2.1円/1kg
※1:小売価格は、総務省「小売物価統計調査」(東京都区部、30年1月)による。
※2:小麦粉製品ごとの原料小麦代金の割合、原料小麦の価格改定率により試算。
※3:食パン1斤は400gとして試算。
※4:小麦粉製品に占める小麦の価格のみに着目し、当該価格が全て今回の政府売渡価格の改定を反映していることを前提として試算。
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